13 履正社の人 −RISEISHA 100 Stories

女性トレーナーの
強みを生かして。

永安 夏未さん

アスレティックトレーナー
鍼灸師
日立ハイテククーガーズトレーナー

2013年 履正社医療スポーツ専門学校 鍼灸学科卒業

 女子プロバスケットボールチームのトレーナーを務めるようになって今年で6年目を迎えます。将来、プロチームのトレーナーになることは、専門学生時代からの夢でした。「自分にしかできないことを作ろう」と考え、卒業後は東洋医学の知識をさらに深めるべく、そこに重点を置いた治療院で働いていました。どちらかというとスポーツの世界とは離れていて、内科的な疾患の患者さんが多いところです。東洋医学には「四診」という診察方法があって、症状を尋ねるだけでなく、脈や舌の状態をみたり、お腹を触って弱っている臓器を探したりします。そういった考え方のもと施術ができるようになりたかったんです。4店舗をあちこち回らせてもらい、ひたすら臨床経験を積みました。その時、平行して休みの週1回、実業団チームでトレーナー活動もしていました。

 元々女性アスリートをみたかったので、東洋医学の必要性はより感じていましたね。女性疾患の悩みに強いと、他のトレーナーとも差をつけられるなって。また、疾患のことは女性同士の方が伝わりやすかったりしますし、ケガの状況によっては腰の骨盤辺りや足の付け根などにテーピングを巻かなければいけません。男性トレーナーに抵抗を感じる選手も過去にいました。女性であることが強みだと感じる場面も多いです。

 私自身は、小学生からバスケットボールを始めました。中学で選抜に選ばれて強化練習にも参加、これから頑張ろうとしていた矢先、半月板を損傷したんです。今思うと、オーバーワークだったかな。高校の頃に膝の手術を受けて約1年リハビリをするんですが、それがとても楽しかったんですよね。瞬発力を鍛えるビジョントレーニングをしたり、半円形のバランスディスクの上に立ってボールをパスしたり。精神面も含めて、当時リハビリを担当してくださった先生にはとても支えられました。その方がアスレティックトレーナーと鍼灸師の資格を持っておられて、履正社の非常勤講師をされていたんです。オープンキャンパスへ参加した時は、両資格を持つ女性の先生が対応してくださいました。女性トレーナーとお会いするのは初めてで、こんなトレーナーになりたいと自分の将来を思い描くことができました。

少しでも長く、

競技を続けてほしいから。

 学生時代は、専任の先生、非常勤の先生、卒業生の方、本当に色々な方にお世話になりましたね。AT実習の期間が終わっても、先生にお願いしてラグビーやバレーボールなどの実習へ連れて行ってもらいました。ラグビーの合宿では、トレーナー2名で何十人という選手を対応されていてとても圧倒されたのを覚えています。選手の名前や痛む場所などが書かれた名簿を見て、先生が手際よく振り分けていくんです。ケアの必要な人、アイシングだけの人、超音波だけの人とか。私たちはアイシングを作ったり、痛みのある選手のチェックをしたりしました。それまで団体競技を見たことがなかったのですごく勉強になりましたね。選手をみるための準備、進め方、ケアの仕方、スピード感。その他、大学のクラブチームやサッカーのミャンマー代表の合宿練習へ帯同したこともありました。学生の3年間は、とにかく色々な競技をみて、経験と知識を増やした時期です。

 プロの現場では、1試合1試合勝つことが非常に重要になってきます。そのため、ケガをした選手の復帰時期は、監督やコーチ、トレーナーとで特に慎重に意見をすり合わせますね。それが1~2年目の選手なのか、引退する選手なのか、試合時期もシーズン前半なのか後半なのか、勝率の状況、対戦相手、相手チームの入れてくる選手など、色々な条件で判断する必要があります。身体の負担を考慮して、プレイタイムに制限をかけることなどもトレーナーとしての大切な役割です。まずはトレーナー3人で相談、その後まとめたものをコーチに投げて、すり合わせたものを監督にもっていきます。うちのチームはスタッフが多いので、コミュニケーションの部分は特に気を付けていますね。普段から、仕事以外にも日常的なことや他愛のない話をするようにしています。また、選手にもしっかりと状況を理解してもらう必要があるので、丁寧な説明は常に心がけています。

 今後は、中高生の選手とも関わっていきたいです。学生時代にケガをしても、治したり休んだりせずプレーを続ける選手が本当に多いんですよ。プロ選手の中にもいます。例えばねんざですよね。昔は「ねんざなんかケガじゃない」なんて言われることもありましたけど、それで靭帯が伸びてしまい、テーピングでがちがちに固めないとプレーできない状況に陥っている選手もいます。もしそこにトレーナーが1人いれば、しっかりと話せていれば、その子の競技人生が変わっていたかもしれない、そんなケースが多いと思うんです。ケガと正しく向き合って、長く競技を続けられる手助けをしていきたいです。

 

Profile

永安 夏未さん

Nastumi Nagayasu

1991年生まれ、大阪府出身。茨木西高校から履正社医療スポーツ専門学校へ入学。ダブル・ラーニング制度で鍼灸とアスレティックトレーナーの勉強に励む。2013年鍼灸学科を卒業後は、東洋医療系の治療院にて4年間鍼灸治療の技術を磨くとともに、男子バレーボール(9人制)の実業団チームでトレーナー経験を積む。その後、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を取得。2017年より女子プロバスケットボールチーム、日立ハイテククーガーズのトレーナーを務める