03 履正社の人 −RISEISHA 100 Stories

自分を変えてくれた
ひとつの言葉。

山田哲人さん

東京ヤクルトスワローズ

2011年 履正社高等学校卒業

 高校2年生の秋、自分を変えることになる言葉と出会いました。国語の授業だったのか、道徳の授業だったのか、はっきり思い出せないのですが、先生に「素直な心を持とう」という言葉をいただきました。

 その少し前、プロ野球のドラフト会議で、自分の一学年の先輩たちが名前を呼ばれているのをテレビで見て、「来年は自分の番だ」と次のステップへの実感がわいていたタイミングでした。野球部の先輩で、すでにオリックスでプレーしていたT―岡田さんからも、プロの世界の厳しさは聞いていましたし、上の世界でやるためにも、「何かを変えないといけない」と漠然と感じていた時期でした。

 実はそれまでの自分は、「要領よく練習をこなす」タイプでした。練習の中で頑張るところと、流すところの一線を引いていたんです。でも、「素直な心」という言葉を聞いてから、それを止めてみました。余計なことを考えずに、ランニングも一本一本、全力で走る。しんどいから、きついから、じゃなくて、体力の限界までやってみる。そうすることが自分の将来につながるはずだと素直に信じて、真剣に取り組んでみたんです。

 続けると、変わってくるんですね。足腰が強くなって、打撃でも飛距離が伸びる。スピードがつくと守備も安定する。考えながら取り組むからメンタルでも余裕が出てきましたし、私生活を見直すことにつながりました。少し考え方を変えるだけで、全てのことがいい方向に動いた。ひとつの言葉で人生は大きく変わるということを、身をもって学びました。

プロに入ってわかった履正社野球のレベル。

 高校時代は気がつかなかったのですが、やっぱり履正社の野球のレベルは高い。走塁一つにしても、例えば1死なら次の塁を積極的に狙う、無死ならタッチアップを優先するとか、打球判断の仕方とか、細かく教えていただいたから、プロに入ってからも野球で困ることはほとんどありませんでした。プロでも通用する基礎をしっかり教えていただいた岡田龍生監督や、コーチの先生方には本当に感謝しています。

 今の自分から後輩に伝えられることがあるとすれば、やはり「素直な心」の大切さです。どんな人生でも、どんな職業でも、壁にぶち当たることはあります。何回もあります。人生は挑戦の連続。時には乗り越えられない壁があってもいい。でも素直な心さえ持って、挑戦を続けていれば、誰にも道は開けるのだと思います。

Profile

山田哲人さん

Tetsuto Yamada

1992年、兵庫県生まれ。3年夏に甲子園出場。2011年に履正社高校を卒業し、ドラフト1位で東京ヤクルトスワローズに入団。2015年に本塁打王、セ・リーグMVP。3割30本塁打30盗塁の「トリプルスリー」をプロ野球史上初めて3度達成。2021年、東京オリンピック野球日本代表として金メダル獲得にも貢献した。同年よりチームの主将を務めている