外科医として、胃がんや大腸がんなど、消化器系のがんを専門にしています。お腹の小さな穴からカメラを入れて、モニターで見ながら行う腹腔鏡手術の「技術認定医」の審査に最近合格しました。出血量が少なく、患者様の身体に負担が少ないため、早期の退院や社会復帰につながる手術方法です。
外科医を目指したのは、単純に「手を動かすのが好き」だからです。子どもの頃から、山や海や川に連れて行ってもらい、虫や川魚をつかまえたりして遊ぶのが好きでした。医学部を卒業した後、2年間の研修医の期間に色んな科で働いた上で、最終的には手技がしたくて外科を選びました。
がんの手術は通常4~5時間、すい臓の手術など長いもので12時間くらい続くのですが、全神経を集中させており、アドレナリンも出ますので、1~2時間は一瞬に感じます。患者様の身体への負担を考えると、手術は1秒でも早く終えたいですから、術中は常に最短経路を探しつつ、状況が変わるたびに模範解答を出し続けていくというイメージです。
患者様とは手術中だけではなく、事前の入院時からかかわりますし、手術後も合併症のリスクがありますので、3~6カ月に1度の定期診察を5年間続けていただいています。術前から含めると長いつきあいですよね。中には退院後、病院宛てに御礼の手紙を送ってくださる患者様もいて、自分の好きなことで人に感謝されるのは、とても幸せだと感じます。
医師の自分にとってかなり響く言葉。
中学・高校の6年間を過ごした履正社の印象は、「熱血」の一言に尽きます。先生方が全員熱血でした。真っ先に思い出されるのは朝の登校時に仁王立ちしておられた生活指導の先生です(笑)。ともかく皆さんカリスマ性があって、単純に授業で教えるのが上手かったですね。生徒を集中させる力がかなり強かったと思います。
いま振り返れば、私は中学の3年間はのびのび過ごさせてもらい、高校の3年間は医学部を目指して受験勉強に励みました。ただ、その中でも勉強と遊び、学校と塾といったメリハリが利いていたと思います。下校時に友人たちと遊んだ広大な服部緑地公園、ドーナツの売り上げを競った文化祭など、青春の思い出はたくさんあります。
胸に残っている言葉を一つ挙げるなら、中学時代、教室の黒板の上に掲げてあった「鍛錬千日、勝負一瞬」です。外科手術にも通ずる、かなり響く言葉だと思っています。というのも、外科医はいつ手術に呼ばれるかわかりません。何かあったら対応する「リアクション」の仕事です。いざその勝負の時がやってきた時に力を発揮することができるかどうかは、いかに日頃の鍛錬を積んでいるかにかかっているからです。
今は大学院に戻って大腸がんの研究に取り組んでいるところです。博士号を取った後は、がん治療に関する最先端の研究が行われているアメリカへの留学も視野に入れています。そしていつか、外科の分野で指導的な立場になる。それが目標です。